抹茶の原料は碾茶(てんちゃ)と呼ばれるもので、一般的な煎茶とは違う製法です。碾茶と煎茶の大きな違いは、蒸したあと揉まずに加工されるという点。揉まずに乾燥させることで青のりのような形状をしており、一見するとお茶には見えないかも?
では、この碾茶がどのように抹茶になっていくのか、碾茶から抹茶の作り方を見ていきましょう!
碾茶の収獲・加工
碾茶は収獲前に20日以上、分厚い布で日光をさえぎります。これにより、甘味・うま味タップリの抹茶になるんですよ!被覆期間が終わったら、いよいよ収獲。収獲された茶葉は、すぐに加工が始まります。急がないと茶葉の発酵が始まって、紅茶やウーロン茶になってしまいますからね!
発酵を止めるには、蒸して加熱するのが一般的。これにより鮮やかな緑色が定着します。蒸した後は茶葉を冷やし、乾燥させます。これで碾茶の荒茶が完成!加工が始まってから約1時間弱で終了してしまうんですよ。
ちなみに煎茶を加工する場合は、碾茶とちがって、蒸した後、揉みながら乾燥させます。揉み工程を繰り返し行うことで、形や品質をそろえていくので、最低でも約3時間はかかってしまいます。碾茶の加工は非常にスピーディなんですね!
碾茶の荒茶を粉々にしたものが抹茶…ですが、碾茶の荒茶はすぐに粉々にされるわけではありません。抹茶の作り方、続きを追いかけましょう!
碾茶の合組(ごうぐみ)
碾茶は荒茶に加工されたのち、固い部分を取り除くため、ふるいで選別します。固い部分は乾燥させて再度選別され、それでも残る部分は「電棒」と呼ばれ、茎茶や棒茶などの原料になります。電気に反応するため電棒というんだとか。
こうして、ていねいに選別され残ったものを「仕上げ茶」といいます。碾茶仕上げ茶は合組を経て市場へ出荷されていきます。合組とは、お茶の世界で言う「ブレンド」のこと。合組を行う場所は「合場(ごうば)」です。
「合組には心眼を使う」と言われるほど…合組はお茶の品質を決める大事な工程。「茶師」と呼ばれる専門家が、長年の知識と経験、そして冴えわたる勘を生かしてブレンドされていきます。
茶葉は季節や天候によって毎回味が変わるものですが、茶師のワザがあるからこそ、いつも変わらぬ美味しい抹茶が楽しめるんですね。
碾茶の出荷
合組された碾茶は、大海(だいかい)と呼ばれる紙袋で出荷されます。大海は特殊なつくりになっていて、真ん中にビニール層がはさまれているため、中の茶葉を湿気や酸化から守ることができるんですよ。
大海ひとつの重さはなんと15kgもしくは30kg。新茶の時期になると、市場に山と積まれた大海を見ることができます。
ちなみに「できないことを無理してやろうとする」ことを「大海を手でふさぐ」といいます。ここで言う大海とは日本海や太平洋のことではなく、この茶袋を指しているのだとか!たしかにこの重さでは、手でふさぐのは難しそうですね。
茶道の大海とは?
荒茶や碾茶の出荷時に使われる大海とは別に、茶道の世界にも大海があります。茶道では抹茶を入れておく容器を「茶器」「茶入れ」などと呼びますが、その種類の一つが大海です。
口が広くて平らな丸型の茶器のうち、大きめのものを「大海」、小ぶりのものを「内海」といいます。いずれも「だいかい」と読むんですって。お茶の世界で海の字が使われるのは、お茶が中国から渡ってきたためといわれます。お茶って奥が深い!
抹茶の完成!
出荷された碾茶仕上げ茶は、各地のお茶屋さんへ運ばれていきます。それぞれのお茶屋さんで独自に合組され、石うすにかけて粉々にすると、とうとう抹茶の完成です。
抹茶の状態になると空気に触れる部分が増え、劣化しやすいので、ギリギリまでてん茶の状態で保管され、出荷される直前に粉砕するんですって。粉砕する際は、もちろん温度や湿度も徹底管理私たちが普段食べたり飲んだりしている抹茶は、こんなにフレッシュなものだったんですね。
もしてん茶が湿気ていたときは、粉砕前にもう一度乾燥させます。細かくなった抹茶は、ふるいにかけて毛葉(ケバ)を取り除きます。毛葉は毛羽ともいわれ、文字通りフワフワ。茶の茎の皮にあたるそうです。
こうして世にも美しい抹茶が完成。茶畑から抹茶ができるまで、知らないことがたくさんあっておもしろかったですね!
抹茶の種類
抹茶といえば、いくつかの銘柄を合組しているものがほとんど。しかし最近では、銘柄を限定した品種茶抹茶・シングルオリジン抹茶も脚光を浴びています。抹茶人気が世界的に広がり、抹茶界にも新風が吹いているのかもしれませんね。
抹茶の銘柄をいくつかご紹介します。
さみどり
さみどりとは、若葉・若草のような緑色、という意味。碾茶の中でもっとも多く栽培されている品種です。収量が少ないのが唯一の欠点といわれ、それ以外は抹茶としてパーフェクトな品種なんだとか。色、味、香り、うま味、と四拍子揃ってすばらしい品種です。
あさひ
碾茶の中ではもっとも高値で取引されている品種です。なにより香りが良く、合組では欠かすことができません。ヒスイのよう、と表現されるあざやかな緑色が美しいです。和紅茶用の銘柄としても栽培されています。
やぶきた
碾茶だけでなく、煎茶としても日本でもっとも多く栽培されている品種です。日本のチャノキの8割はやぶきたといわれるほど。うま味と渋味のバランスがよく、日本茶らしいさわやかさを感じる風味です。碾茶になると黄色っぽくなってしまい、色が薄くなるのが難点。
おくみどり
あざやかな濃い緑色が人気で、近年人気が急上昇している品種です。緑茶として飲むと、クセがなくてほのかな甘みがあります。晩生のため、少しでも早く収獲できる鹿児島県での栽培が中心です。
すすむ屋茶店では、濃茶、薄茶、製菓用など、様々な用途に合わせた抹茶を取りそろえていますよ!ぜひお試しください!
\詳しく知りたい方はこちら/