日本茶の始まりは中国から? 奈良時代から平安時代

コラム

日本にお茶が入ってきたのは、平安時代といわれています。当時の遣唐使や仏僧が中国から持ち帰ったものが始まりで、徐々に今のような日本茶になったのだとか。今と違って命がけで海を渡った時代、日本茶とはどのようなものだったのでしょうか?

中国からお茶が日本上陸!

遣唐使が日本と中国を往来していた奈良・平安時代。当時の日本はようやく法律が整ってきて、天皇を中心とした政治が始まったばかり。国家のお手本として、当時の大国・中国へ遣唐使を派遣することになりました。

遣唐使は日本に多くのものを持ち帰ります。その中のひとつにお茶があったのです。『日本後紀』によると、815年に仏僧の永忠が滋賀里の梵釈寺で嵯峨天皇にお茶を献上した、とあります。そのころにはすでに日本にお茶が伝来していた、ということになりますね。

さらにさかのぼると『奥義抄』に729年と749年に聖武天皇が「引茶」を行ったという記録も。仏経を読んだ500人の僧侶にお茶を振る舞う行事だったようですが、そもそも奥義抄は平安後期に記された書物。500人といえばかなりの大掛かりな行事なのに奈良時代の文献には引茶の記録がなく、信ぴょう性には疑問が残ります。

とすると、やはり遣唐使が日本にお茶を持ち帰った、というのが正しそうです。当時のお茶は「餅茶(へいちゃ)」といわれるもので、蒸した茶葉をすりつぶし、お団子状に丸めて乾燥させたもの。餅茶を火であぶって細かく砕き、塩や野菜、木の実などと一緒に煮込んで飲んだんだとか。お茶というよりは薬膳スープのようですね。

餅茶は大変な高級品。貴族や僧侶だけに許された珍味で、一般の人々には広まることはありませんでした。894年に遣唐使が廃止され、中国でも唐が滅び五代十国の分裂時代が訪れます。日本と中国のつながりは薄くなり、お茶は日本の歴史からいっとき姿を消してしまうのです。

遣唐使とは?

遣唐使とは、日本から中国に派遣されていた使節団のこと。飛鳥・奈良・平安時代と、時代をまたいで20回ほどの派遣があったと伝わります。(※回数については諸説あります。)

当時、海を渡るのは非常に困難なチャレンジでした。大阪の住吉を出発し、瀬戸内海をとおり福岡から大海へ。着いたところが中国かどうか確認するところから始まりますが、ようやく着いた中国が内戦中だった、なんて回もありました。帰ってこれたのはほんの一握り…ということも珍しくありません。

それでも並々ならぬ魅力があったのでしょう。当時の中国は世界の最先端を行く超先進国。今でいうロシアや中東のあたりにまで手を伸ばす勢力・支配力を持っており、世界中からあらゆる銘品・珍品が集まる大都会でした。

日本茶の栽培

遣唐使を通じて日本へやってきたお茶の種は、日本の地に根付いたとも、根付かなかったともいわれます。日本茶のルーツについては、遣唐使の中でもよく知られる天台宗の開祖・最澄にまつわる伝説があります。

最澄が延暦寺をひらいた比叡山のふもとに、最澄が茶の種をまいた…という説。日吉茶園といって、現在でもお茶を栽培しているんですよ。近年行われたDNA鑑定の結果、日吉茶園の茶葉は中国の天台山にあるものと同種と判明しました。

空海もまた、お茶を仏教の儀式に用いたと伝わります。三重県鈴鹿、奈良県宇陀など、空海が植えたといわれるチャノキが日本のあちらこちらに残っているんですよ。遣唐使から茶事を受けた嵯峨天皇も、現在の京都、滋賀、兵庫などをはじめ、各地で茶の栽培を奨励したといわれています。

日本の歴史から隠れてしまったため、お茶は日本に根付かなかった…と言われるのでしょう。文化として浸透することはなくても、お茶の栽培だけはヒッソリと受け継がれていたのかもしれませんね。

お茶のはじまりっていつ?

中国種チャノキの原産地は中国の雲南省といわれており、現在はプーアル茶の産地として有名な地域にあたります。プーアル茶も日本の緑茶も、加工方法は違いますが、もとは同じチャノキから作られているんですよ。

ちょうど遣唐使のころ、中国では『茶経』が記されました。餅茶をはじめとするお茶や飲み方、お茶を飲むための器具、チャノキの栽培方法などが詳しく記されています。茶経によると、中国茶のはじまりは「神農」なんだとか。

神農とは古代中国に登場する神様で、農業と医療を広めたといわれています。みずからの体で、ありとあらゆる毒草・薬草を試し、お茶を薬として利用していました。これは紀元前2700年ころのこと。

神様の時代ともなるとアヤシイですが、歴史書をひも解くと紀元前1100年ころには献上茶の存在が確認されています。当時は殷王朝の時代、いずれにせよ神話の世界には違いありません。神様の時代から飲まれていたなんて、お茶って本当にスゴイ!

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