京都宇治だけじゃない!抹茶の産地について紹介します!

産地

抹茶の需要は年々増加していると言われますが、どこで生産されているかご存知ですか?抹茶の生産地といえば、やはり京都が有名。なかでも宇治市で生産される抹茶はブランドイメージもありますね。

しかし抹茶を生産しているのは京都の宇治だけではありません。抹茶の生産地にはどんなところがあるか、見てみましょう!

茶品評会の様子

茶品評会とは、全国から集まったお茶の味わいを評価する大会のこと。毎年8月下旬の数日間に開催されており、各地を代表する審査員・研究員が評価にあたります。

煎茶部門、深蒸し煎茶部門、かぶせ茶、玉露、てん茶…と、お茶のジャンルを細かく分け、見た目・香り・お茶の色・味わいの観点から厳しく採点。その合計点で優劣を競うのです。

抹茶の原料は「碾茶(てんちゃ)」です。2020年のてん茶部門には、8府県から171点が出品されました。そのうち1位から37位までが京都府産のてん茶という結果に。このうち25点は宇治市産ということから、宇治抹茶のパワーがうかがえます。

宇治以外には城陽市(じょうようし)から10点、久世郡久御山町(くぜぐんくみやまちょう)から2点。38位以降には福岡県八女(やめ)市産のてん茶がいくつか登場します。八女茶といえば、てん茶以外にも玉露の生産で知られますね。

そのほか、100位以内の常連勢としては愛知県、静岡県、鹿児島県が有名です。

抹茶産地あちこち

京都府

京都府の中でも宇治(うじ)の抹茶はダントツの生産量・品質を誇ります。なかでも和束町での生産がさかんなんだとか。宇治抹茶では辻利兵衛・中村藤吉・伊藤久右衛門など、聞いたことのある日本茶店さんも多いですね。

宇治で抹茶の生産が盛んなのは、鎌倉時代に端を発します。鎌倉時代といえば茶道が盛んになり、貴族を中心に闘茶が流行したころ。地質や地形などの自然条件が恵まれていたことから、宇治でのてん茶栽培が拡大したのだと言われています。

闘茶とは、お茶の産地当てゲーム。これがじょじょに、茶室や茶道具を鑑賞する「茶の湯」へと進化していきます。その間、宇治では足利将軍の庇護を受け、質の良いお茶の生産を行っていました。

やがて「覆下栽培」が発明され、宇治茶の品質は確固たるものに。覆下栽培とは、お茶を収獲する前の三週間ほど前から茶樹に覆いをかぶせ、日光をさえぎってしまうという栽培方法。これにより渋味成分のカテキンが生成されず、うま味成分のテアニンが豊富なお茶になります。

千利休のころから、宇治抹茶は渋味が少なくまろやかな味で知られていたんだとか。現在のてん茶はすべて、こうした覆下栽培を行ったものを言います。宇治は、覆下栽培発祥の地でもあったのです。

おなじく城陽市も、よしず・わら等で茶樹を覆う伝統的な覆下栽培を続けているところ。京都は長い間ずっと抹茶生産の本拠地であり、老舗なんですね。

福岡県

福岡県八女市は、伝統本玉露の生産で知られるところです。八女茶(やめちゃ)と言うと、甘味・コクが強く美味しいお茶で有名ですね。生産量も多く、全国の日本茶生産量の3%を占めています。

伝統本玉露とは、茶樹の剪定を行わず、手摘みによる収獲を行うなど、様々な規定をクリアした高品質な玉露だけが名乗ってよい称号。一定以上の価格で落札されなければならない、など厳しい条件が並びます。

伝統的な製法を続けるには手間ひまがかかりますが、だからこそ確かな味・品質が守られているんですね。

愛知県

愛知県西尾市は抹茶生産に力を入れており、全国で初めて抹茶の地域ブランドを登録したことで知られています。西尾市で生産されているお茶の96%はてん茶、という力の入れっぷり。

矢作川がもたらす豊かな土と、川霧とに恵まれ、日本の抹茶の2割を生産しています。江戸~明治期になるまで開発の手が入らず、水害に悩んだ地域でもあります。ほんの数年前まで治水工事が行われ、現在では豊かな農業地帯となっているんですよ。西尾の抹茶は、苦労の末に生まれた結晶なんですね。

静岡県

日本一のお茶どころ、静岡県。静岡では煎茶、深むし茶、玉露、てん茶など、あらゆるお茶を生産しています。抹茶の生産が始まったのは京都と同じころと言われ、浜松とゆかりのある徳川家康も静岡産抹茶を多用していたんだとか。

中でも藤岡市岡部町の朝比奈では抹茶の生産が盛んで、高品質な抹茶の代名詞にもなっています。朝比奈は玉露の生産でも知られており、いずれもまろやかな味わいが特徴です。

鹿児島県

静岡県に次いでお茶生産量の多い鹿児島県では、近年ぐんぐん生産量が伸び、いずれ全国一位になる日も近いと言われています。

広大な土地を利用した大規模な機械生産が特徴で、また、温暖な気候を利用し様々な品種をバランスよく生産しているんですよ。品種が違えば味が変わります。色んな味わいを持っているのが鹿児島茶なんですね。

抹茶の品種

抹茶の原料となるてん茶、てん茶を育てる茶樹(チャノキ)には、さまざまな品種があります。お米でいえばコシヒカリ、あきたこまち、ササニシキなどが品種名にあたります。

さみどり

手摘みてん茶では最も多く栽培されている品種です。抹茶に加工したときの色がよく、香りがよいこと、成長は遅めながら収獲時期が長いことなどが特徴です。

あさひ

育てやすく、鮮やかな緑色が特徴です。収獲できる期間が短く、タイミングを逃すとすぐに味が落ちてしまいます。そのため栽培量を増やすことができず、希少性が高いことから、てん茶の品種の中ではもっとも高値で取引されています。

やぶきた

やぶきたは日本全国で最も多く育てられている品種です。ハサミで収穫するための品種として育てられています。もともと黄色っぽい葉なので、抹茶にすると色が薄くなることが多いんだとか。

おくみどり

濃い緑色が特徴で、抹茶に加工すると大変鮮やかな色になります。しかし渋味があることから、茶道用ではなく食品用・加工用として人気です。少し加えるだけで鮮やかな抹茶スイーツが作れるんですね。

抹茶の作り方

抹茶はてん茶を粉状に加工したもの。中には普通の煎茶を粉状にし、抹茶と偽って販売している例もあるのだとか。世界的に抹茶の需要が増していることから、外国産の質の良くない抹茶も出回ってきているといいます。

粉末煎茶と抹茶では、当然味わいが違います。日本人なら覚えておきたいですね。では抹茶と煎茶の味の違い、どうして生まれるのでしょうか?抹茶の作り方を、煎茶の作り方と比較しながら見てみましょう。

抹茶の作り方①覆下栽培

抹茶の原料となるてん茶は、収獲する三週間ほど前から日光をさえぎり、覆下栽培を始めます。中には日数をかけて少しずつ覆いを重ね、じょじょに遮光率を上げていく茶園も。

この遮光期間がまったくないものが煎茶です。1~2週間遮光するとかぶせ茶(おおい茶)になります。また、玉露もてん茶と同じように3週間程度の遮光期間があります。

抹茶の作り方②摘採・蒸し・乾燥

茶葉を収獲することを摘採(てきさい)と言います。摘採されると、茶葉はただちに発酵を始めます。発酵を進めるとウーロン茶や紅茶になるんですよ。

緑茶は、茶葉を発酵させずに作る不発酵茶。発酵を止めるため、急いで加熱します。日本では蒸して発酵を止める蒸し加工が一般的。蒸したあとの茶葉は冷却しながら乾燥する工程に移ります。

てん茶は冷却した茶葉をすぐに乾燥させますが、煎茶やかぶせ茶、玉露では揉み加工を挟みます。茶葉を揉んで水分を絞りながら、茶葉の細胞組織を壊し、お湯を注いだときにお茶が出やすくする作業です。

しかし抹茶は粉々にしてお湯を注いで飲むもの。茶葉の細胞組織を壊したりする必要はありませんので、すぐに茶葉を乾燥させます。乾燥が終わるとてん茶の出来上がりです。

抹茶の作り方③合組・粉砕

乾燥したてん茶は、固い部分を取り除いて出荷となります。粉々にするのは販売の直前で、粉砕前の状態で冷蔵保管しているお茶屋さんも多いです。臼(うす)で挽くと、抹茶特有の深い香りがしてきますよ。

一方、煎茶・かぶせ茶・玉露は、揉んで針状に成形しながら乾燥させます。てん茶は、この揉み・成形がない分、煎茶よりも早く出来上がります。

また、全国から集まったてん茶ををうまくブレンドするのもお茶屋さんの仕事。品種が同じでも、産地が違うと土の質や気候の違いから、微妙な味わいの差が生まれます。

ハサミで収穫するか、手摘みで収穫するか、によっても味が変わります。熟練の茶摘み師は美味しい新芽だけを厳選して摘むことができるからです。ただし、その分、時間も人件費もかかり、値段は高くなりがち。

また抹茶を粉々に挽く臼の質によっても味が変わるんだとか。より細かく、均一な粒にしたほうが、滑らかで色鮮やかな抹茶を楽しむことができます。

お茶をブレンドすることを合組(ごうぐみ)と言います。合組はお茶屋さんの腕の見せ所。様々なお茶の個性を生かし、世界に一つだけのブレンドを生み出すのです。

抹茶の産地を楽しもう!

抹茶といえば京都のイメージどおり、京都は抹茶発祥の地であり、当時から変わらず抹茶生産の中心地でした。苦労の末に開墾された各地でも、独自の特徴を生かし、それぞれの土地でしかできない抹茶を生産しています。

様々な産地による豊かな抹茶を楽しめるようになった現在。産地による違いを試してみるのもおもしろいかもしれませんね。

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