ほうじ茶にはカフェインがあまりふくまれておらず、妊婦さんが1日に数杯飲む分には問題ないと言われます。煎茶や紅茶、コーヒーなどと比べながら、具体的な量や目安について紹介します!
カフェインと妊婦さんの関係
カフェイン(caffeine)とは、コーヒー(coffee)から抽出された成分として、名づけられました。コーヒーに多くふくまれるのはよく知られていますが、ほかにも緑茶、ウーロン茶、紅茶、ココア、コーラ、エナジードリンク、チョコレートや豆類にもふくまれています。
カフェインは、人を興奮させたり、覚醒させたりするはたらきがあるほか、解熱鎮痛作用、強心作用、利尿作用などがあります。「カフェインを取りすぎると夜眠れなくなる」というのはよく聞きますが、カフェインと妊婦さんには、一体どんな関係があるのでしょうか。
人は、体内にカフェインを代謝する酵素を保有しています。最終的に、カフェインは尿とともに体外へ排出されるわけですが、妊娠するとこの酵素が減少してしまうのだとか。つまり、妊娠するとカフェインを代謝しにくくなってしまう、ということです。また、おなかにいる赤ちゃんには、カフェインを代謝する能力がほとんどありません。
そのため、妊婦さんがカフェインを取りすぎると、おなかにいる赤ちゃんが低体重になったり、流産してしまう可能性が高くなると言われています。また、産後の妊婦さんの健康リスクや、生まれてきた赤ちゃんの健康リスクを高める可能性も指摘されているなど、妊婦さんがカフェインを取る場合には注意が必要です。
妊娠中に摂取してもよい?カフェインの量
日本では、カフェインの制限量をもうけていません。これはカフェインを摂取したときの体への影響は、個人差が大きいため。WHO(世界保健機関)や一部の国では基準が設けられており、厚生労働省でも参考として紹介しています。
WHOでは、カフェインの胎児への影響は未確定としながらも、妊婦は1日にコーヒー3~4杯までにとどめるよう呼びかけています。1杯(120ml)のコーヒーにふくまれるカフェイン量が72mg程度ですので、1日に200~280mg程度のカフェイン量がのぞましい、ということになります。
イギリス食品基準庁では、妊婦がカフェインをとりすぎると、赤ちゃんが低体重で出産され、将来の健康リスクが高くなる可能性があるほか、高濃度のカフェインは流産を引き起こす可能性があるとしています。1日の摂取量は200mgが上限。
カナダ保険省では、カフェインの過剰摂取は不眠症、頭痛、イライラ、脱水症、緊張感を引き起こすため、妊娠中・授乳中の女性は1日に300mgまでとしています。
それでは、ほうじ茶だとどれくらいの量になるのでしょうか?ほうじ茶1杯(120ml)にふくまれるカフェインの量は、約24mg。コーヒーの1/3になります。妊婦さんの上限とされている200~300mgのカフェイン量基準に当てはめてみると、8~12杯。妊婦さんであっても、通常の範囲内でほうじ茶を飲む分には問題ないと言えそうです。
カフェイン量比較
100mlあたりのカフェイン量 | 1杯あたりのカフェイン量 | 200~300mg相当数 | |
ほうじ茶 | 20mg | 24mg(1杯120ml) | 8~12杯 |
煎茶 | 20mg | 20mg(1杯100ml) | 10~15杯 |
番茶 | 20㎎ | 20㎎(1杯100ml) | 10~15杯 |
玉露 | 160mg | 32mg(1杯20ml) | 6~9杯 |
玄米茶 | 10mg | 12mg(1杯120ml) | 16~25杯 |
紅茶 | 30mg | 105mg(ティーポット1杯350ml) | 2杯 |
ウーロン茶 | 20mg | 30mg(茶壷1杯150ml) | 6~10杯 |
コーヒー | 60mg | 72mg(1杯120ml) | 2~4杯 |
コーラ | 10~13mg | 35~45mg(1缶350ml) | 5~8杯 |
日本食品標準成分表2015年版(七訂)を参考にした数値です。飲み物によって1杯あたりの分量が違うことにご注意ください。
ほうじ茶のカフェイン量
食品成分表によると、煎茶は10gの茶葉を430mlのお湯で1分抽出したもの。ほうじ茶は15gの茶葉を650mlのお湯で30秒抽出しています。茶葉の量が増えた分、ほぼ同じ割合でお湯の量も増やしていますね。抽出時間に差がありますが、カフェイン量は同じです。
2020年の成分表八訂版を調べてみましたが、2015年版と全く同じ数値になっています。茶葉を炒っても、カフェイン量に変化はないということがわかります。
ほうじ茶の成分
ほうじ茶には、カフェイン以外にもカテキン・タンニン、葉酸が多くふくまれています。妊婦さんに葉酸サプリがおすすめされるのはよく知られていますね。
カテキン・タンニンは、鉄分の吸収を妨げるはたらきがあります。貧血の症状がある妊婦さんは要注意。食後すぐに飲むと、食事の鉄分を吸収しにくくする可能性が指摘されています。ほうじ茶を飲むときは、食後1時間以上の間をあけるのがおすすめです。
貧血が気になる妊婦さんは、鉄瓶でお湯を沸かすという方法も。鉄瓶で沸かしたお湯はまろやかになり、お茶に甘味が出ると言われます。同じ原理を利用したものに「鉄玉」もありますよ。お湯を沸かすやかんに入れるだけで、水に溶けだした鉄分を効率よく摂取することができます。
ただし、鉄欠乏症などで治療を受けている方は、あらかじめ病院で相談してくださいね。
ほうじ茶特有の香り成分「ピラジン」
ほうじ茶特有の成分として、ピラジンがあげられます。ピラジンはほうじ茶の香り成分のひとつで、血流をよくする作用やリラックス作用があるんだとか。妊婦さんのリラックスタイムにほうじ茶を飲めば、体にも心にもいいですね♪
妊婦さんのリラックス作用を高めるには、ほうじ茶を自分で作ってみるのもおすすめです。ほうじ茶は、フライパンなどで緑茶・煎茶の茶葉を炒めるだけでかんたんに作れるので、キッチンがリラックススペースに早変わり!家中ほうじ茶の香りで満たされて、なんとも言えない幸せな気持ちになるでしょう。
できたほうじ茶は、できるだけ沸騰し立ての、高温のお湯を使って入れましょう。高温のお湯を使うことで、ほうじ茶の香りが立ち、ピラジンの効果を存分に発揮することができます。暑い夏には冷たく冷やして、スッキリと楽しむのもいいですね。
リラックス成分「テアニン」
妊婦さんがリラックスしたいなら、テアニンの存在も忘れてはいけません!テアニンは、玉露や抹茶に多くふくまれるリラックス成分で、もちろんほうじ茶にもふくまれています。
だったら玉露や抹茶を飲んだ方がいいのでは?と感じるかもしれませんが、玉露や抹茶には、カフェインもたくさんふくまれています。妊婦さんなら、カフェインが少ないほうじ茶でリラックスするのがおすすめです。
ほうじ茶にもふくまれる葉酸って?
葉酸とは、新しい赤血球をつくったり、妊娠初期にDNAの合成をするほか、胎児の発育に重要なはたらきをすると言われています。
とはいえ、葉酸だけ摂取していればよいわけではありません。さまざまなビタミンやミネラルをバランスよく補うのが理想的。ほうじ茶だけではなく、色んな食事からバランスよく栄養を取り入れてくださいね。
カテキン・タンニンとは
お茶にふくまれるカテキン類はタンニンの一種。そのため、お茶カテキンはタンニンと呼ばれ、同様に扱われることもあります。
ただしワインにふくまれるタンニンは別。ワインにカテキンはふくまれていません。
厳密にいうと、タンニンの方が大きなくくりということですね。現在ではカテキン、茶カテキンと呼ぶのが一般的です。
妊婦さんはほうじ茶を飲んでも大丈夫!?
ほうじ茶にふくまれるカフェインの量は、心配するほどの量ではないと言われています。とはいえ、飲みすぎには注意しましょう。
※個人差があります。心配な方は控えましょう。
更に、貧血の症状が出ていたり、鉄欠乏症の治療中の方は注意が必要。カテキン・タンニンが鉄分の吸収を邪魔することがあるからです。食後すぐ飲まず、1時間以上あけてから飲むのをおすすめします。
ほうじ茶には葉酸やピラジンなど、妊婦さんにうれしい成分もふくまれているので、リラックスタイムに上手に活用してくださいね!