急須(きゅうす)と聞くと、朱色のものを思い浮かべる方が多いかもしれませんね。実はこれ、急須の代表選手、常滑急須(とこなめきゅうす)の特徴なんです。
常滑急須は高い技術力で作られており、美味しいお茶が入れられるとして人気が高いんですよ。急須の生産量は全国一と言われており、国内シェアは9割とも。
常滑急須、常滑焼について詳しく調べました!
常滑急須とは?
常滑急須とは、愛知県常滑市を中心に生産された急須のこと。重要無形文化財に認定されています。また、常滑急須の名工・山田常山は平成10(1998)年に人間国宝として認定されました。
常滑急須は、水田の底から掘り出した「田土」を原料にしています。田土は酸化鉄を多く含む粘土で、焼いたときに赤く発色するため「朱泥(しゅでい)と呼ばれているんだとか。常滑急須の朱色は、朱泥によるものだったんですね。
常滑急須は酸化鉄を多くふくむため、お茶の渋味・苦味成分を吸着し、まろやかな味のお茶を入れることができます。一方で耐水性に優れており、水分を吸ってしまうことがありません。渋味・苦味だけを取り除き、うまみを引き出してくれるんですね。
近年では釉(うわぐすり)を使い分け、朱色ばかりでなく黄色、黒、茶色、ほか様々な色の常滑焼も出ています。
また、常滑急須のフタはピッタリと密着し、気密性が高いことで知られます。これは製造過程で「蓋すり」と言われるていねいな作業を行っているため。気密性が高い常滑急須は、じっくりとお茶の美味しさを引き出すことができます。
常滑焼の「蓋すり」
質の悪い急須の中には、蓋と本体がピッタリかみ合わず、ガタガタ言ったり、スキマが開いてしまうのを見たことがありませんか?常滑焼では「蓋すり」というていねいな工程を行っているので、蓋を閉めた時に本体とピッタリと密着します。
蓋すりは、焼いた後に一個一個、急須本体と蓋を合わせる工程です。蓋と急須本体の接着部分に磨き粉をつけ、スキマができないように研磨しています。そのため別の本体と合わせても、蓋が合わないことがあります。常滑焼の蓋と本体は一心同体なんですね。
釉薬(うわぐすり)
釉薬とは、陶器や磁器を焼く前に表面にかける液体です。水に粘土や灰を混ぜたもので、焼くと粘土成分・灰成分が融け、ガラスを思わせるツルっとした質感になります。
一方、釉薬を使わないで焼いたものを「素焼き」と言い、ざらつきのあるデコボコした手触りになります。
釉薬を用いることで手触りがよくなるだけでなく、目に見えない小さな穴をふさぐことができるので、液体を入れても漏れたりしなくなるんだとか。このほか、釉薬によって色を変えることもできます。
ちなみに基本的な常滑焼には、ほとんど釉薬を使いません。しかし原料となる朱泥がとても細かい粒子なので、素焼きでもザラザラした食感にはならずに、サラッとして吸い付くような手触りになります。
お茶を入れた時にまろやかな味わいに変化するのも、素焼きだからこそ。きちんと手入れしていれば、使うほどに急須が育ち、色ツヤも増していき、より美味しいお茶を入れられるようになるんですよ。大事に育ててあげてくださいね。
常滑急須のお手入れ
常滑急須は、使った後はできるだけ早く洗ってあげましょう。お茶殻を放置しておくと、雑菌がどんどん繁殖してしまいます。
洗った後はよく乾かすのも大切です。乾燥させることで、清潔な状態を保つことができますよ。
普段は水洗いで十分ですが、注ぎ口や茶こし部分に茶渋汚れが溜まってきたら、専用のブラシなどできれいに磨いてあげましょう。漂白剤や重曹を使ったお手入れもOK。その場合もすすいだ後はよく乾燥させましょう。
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常滑焼とは?
常滑焼とは、愛知県常滑市を中心に作られている焼き物のこと。平安末期にはすでに3,000基もの焼き物窯があったと伝わり、鎌倉や京都、広島、博多など、各地遺跡で常滑焼が発見されています。
当時、常滑焼はお酒造りの甕(かめ)に多く使われ、油の保存や染め物に使われてきました。江戸後期には急須の製造が始まり、杉江寿文が常滑急須を確立させます。
明治維新のころには下水道整備のため常滑焼の土管が用いられるようになり、盛んに生産されました。近代では帝国ホテルの表面タイル(レンガ)に常滑焼が採用されています。
常滑焼のワザ
常滑焼はロクロを使って手作りで成形するものと、型にはめ込んで焼いていくものがあります。ほかにも様々な成形技法があり、無形文化財に指定されている技術も!
「ヨリコづくり」は、ロクロを使わずに大きな甕や壺を作成する技術。直径15cmほどのひも状(円柱状)に粘土を積み上げます。
「たたら成形」は大型の盆栽鉢などに使われる技術で、粘土を薄い板状に斬り、箱を作るように成形します。
二色以上の粘土を混ぜ合わせ、美しい縞模様を楽しむ「練り込み」や、焼き窯の中に積もった灰を釉とする「灰釉」、海藻の塩分を釉薬とした「藻掛け」など、常滑焼だけの技術がたくさんあり、これらを組み合わせて新たな常滑焼が開発されています。
日本六古窯とは?
日本六古窯(にほんろっこよう)とは、日本の陶磁器のうち特に歴史の古い6窯をいいます。
日本でもっとも多く生産されている焼き物は岐阜県の美濃焼ですが、それ以外にも優れた焼き物があるとして、古陶磁器研究家・小山冨士夫が選出したものです。
日本六古窯は1948年ころに選出され、2017年春、日本遺産として認定されました。現在では六古窯日本遺産活用協議会が中心になり、日本の古陶磁器の魅力を発信しています。
おすすめの常滑急須
すすむ急須
すすむ屋茶店の店舗でも使用しているオリジナル急須です。すすむ屋茶店がお取り扱いする中では、最も人気のある品でもあります。
シンプルで無駄のない形状にしたことで、日本茶の味を最大限に引き出すことができます。キリっとした黒色ですが、常滑の朱泥を使ったもの。釉を使わず、二重に焼き上げているんです。
注ぎ口、フタ、持ち手、すべてロクロを使用した手作り。こだわりの急須を育てながら、美味しいお茶のひとときを味わいませんか。
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常滑ろくろ急須
常滑ろくろ急須101(朱)は、常滑急須らしい朱色の急須です。昔ながらの愛らしいデザインですが、こちらも日本茶をおいしく入れるためだけにデザインされた理想的な形状です。
使えば使うほど濃い朱色となる常滑急須。ぜひじっくりと育てていただきたい一品です。
すすむ屋のこだわり「セラメッシュ茶こし」
セラメッシュ茶こしとは、急須の内側にくっついている陶製の茶こしです。金属製の網を貼るのではなく、焼く前に朱泥で成形した茶こしをピタッとくっつけ、本体と一体になっています。金属臭や味の雑味が出ないので、お茶本来の美味しさを最大限に引き出せる急須と言えるでしょう。
セラメッシュ茶こしには、もうひとつ大きなメリットがあります。金属製の茶こしを洗っていると、細かな茶葉がまぎれこみ、詰まってしまう…そんな経験はありませんか?セラメッシュ茶こしは金属製の網よりも目が大きいので、詰まってしまう心配がありません。
一方でお茶を注ぐときはちゃんと引っかかり、茶葉がお茶の中に流れ込まないようにできています。技術の進化って素晴らしいですね!
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