真っ黒でどっしりとした存在感のある南部鉄器…というイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、最近の南部鉄器はカラフルでかわいいんです。
南部鉄器の急須は、内部がホーロー加工されていることも多いですが、南部鉄器の鉄瓶でお湯を沸かせば、まろやかで日本茶にピッタリのお湯になります。さらに鉄分も摂取できるなど、体にもヨシ!
一度使うと手放せない南部鉄器の魅力を解説します。
南部鉄器とは?
南部鉄器とは、岩手県で伝統的に製造される鉄器です。上質の砂鉄や砂、粘土などが出ることから製造がさかんになり、江戸初期には現在の南部鉄器に近いものが完成していたと言われます。
はじめは武器などを作っていたものが、江戸後期になって小ぶりの鉄瓶を作ったところ、多くの人の手に渡ることとなり、南部鉄器の名が日本中に知れ渡ったのだとか。明治期には展覧会入賞や東北本線開通などをきっかけに、人気が出ました。私たちが「南部鉄器」と聞いてイメージするのは、この鉄瓶がほとんどです。
しかし戦時中は軍需関連品以外の製品が禁止され、南部鉄器の職人も十数名にまで激減してしまいます。戦後はアルミニウム製品などの台頭で衰退してしまいますが、近年になって鉄分が摂取できること、高い実用性が見直され、海外での人気も高まっているんですよ。
南部鉄器ができるまで
南部鉄器は、細かな工程を積み重ねて完成させるものです。ものによっては2か月ちかくかけることもあるんだとか。ここでは、鉄瓶の製造過程をもとにしています。
まずはデザインを考えるところからスタート。デザインは原寸大のものを用意し、これを回転させることで正確な立体を形作ります。これに基づいて鋳型を作成していきます。
鉄器内部は空洞になるため、大小二組の鋳型を作り、その間に鉄を流し込むイメージです。まず木製の鋳型をつくり、粘土や砂などで型を取り、乾燥してしまう前に模様を推していきます。
粘土の型を焼き上げ、溶かした鉄を流し込みます。鉄が固まったら型から取り出し、さらに高温の火で焼きます。仕上げにさび止めのため、漆やおはぐろを塗ります。最後につる(持ち手)を取り付けて完成です。
南部鉄器の良さとは?
南部鉄器の良さは、丈夫で長持ちするところ。世代を渡って使っているご家庭も珍しくありません。
南部鉄器の原料となっている鉄は、ステンレスよりも熱伝導率が高いので、早く沸きあがります。いっぽう、じっくりと均一に温める性質があるので、温度ムラがありません。一度沸いてしまうと冷めにくいのも特徴ですね。
南部鉄器でお湯をわかすと、じっくりと熱が均一に伝わるので、まろやかなお湯になり、味を濃く感じると言われます。普段の日本茶でも、より美味しく入れることができるんですね。
近年、特に注目されているのは鉄分です。南部鉄器からは2価鉄(第二鉄、Fe³⁺、ヘム鉄)が取れると言われており、3価鉄(非ヘム鉄)に比べ体内に吸収されやすいんだとか。特に女性の方は鉄分が不足しがちなので、南部鉄器で美味しく健康を目指すのもいいかもしれませんね♪
南部鉄器のお手入れ
普段のお手入れは水で軽くすすぐだけでOKです。内部に水やお湯が残っていると、サビの原因になったり、お湯が濁ったりしやすいので、使い切るか、ポットに移すなどして、残りは捨てるようにしましょう。
使用後によく乾燥させると、内面が赤くなってきますが、こすり落とすのはNG。次第にその上から湯垢が白い膜を作り、透明な水を保つようになります。ここまで育てることができたら、より美味しいお湯が沸くようになってきます!
なお、南部鉄器の鉄サビは体に悪いものではありません。鉄分を摂取できると思って、喜んで飲んでください♪
外側(表面)にも水分がついているとサビになりやすいので、乾いたふきんで拭き取ります。お湯を沸かした後など、熱いうちに固く絞ったふきんで磨くと、表面にツヤが出てきます。ただし南部鉄器はとても熱くなりますので、くれぐれもヤケドにはご注意ください。
もし内部が激しくサビついてしまったり、お湯が濁ったり、ニオイが気になるときは、お水と一緒に煎茶の茶葉を入れて、グツグツと火にかけます。これはお茶に含まれるタンニンと鉄分の化学反応を利用したもので、サビを取り除くことができるんですよ。
からだき注意!
南部鉄器は空焚き(からだき)にすると危険です!非常に熱くなり、触るとヤケドしますし、場合によっては火事の危険性も。
もしウッカリ空焚きしてしまったときは、あわてて水をかけたりしちゃダメ!割れたりすることがあります。まずは自然に熱が冷めるのをじっくりと待ちましょう。冷めたら、変形していないか、水漏れしないか、サビができていないか、よく確認します。
実際にお湯を沸かしてみたら水が漏れてくる…ということもあります。その場合は修理が必要です。でも修理対応ができるのも南部鉄器のいいところ。ぜひじっくりと育て、長く使っていきたいですね。
南部鉄器の急須
南部鉄器の急須は、内部がホーロー加工されています。そのため南部鉄器の急須でお湯を沸かすことはできません。また鉄分を取ることもできません。
しかし南部鉄器の急須の良さは、温度ムラがなく、お茶の美味しさを引き出せるところ。お茶が冷めにくく、長持ちするのもよいところですね。
南部鉄器の急須を扱うときは、ホーローを傷つけてしまうので、金属タワシやメラミンスポンジなどはNG。ホーロー部分は急に冷やしたり、高いところから落とすなど、衝撃にも弱いです。ていねいに扱ってくださいね。
テーブルやお盆に直に乗せると、鉄の黒味が移ってしまうことがありますので、急須敷きを用意するのがおすすめです。
何世代にもわたって長く、美味しく使える南部鉄器。ぜひ試してみたいですね!