お茶の産出額日本一は鹿児島県!?お茶の歴史が動いた瞬間。

コラム

これからは、お茶と言えば鹿児島県!って、ご存知ですか?

お茶と言えば静岡県でしょ?と思った方もいるかもしれませんね。静岡県は半世紀以上にわたって、お茶の産出額日本一を維持していました。しかし、ここ数年は低迷が続き、とうとう2019年は鹿児島県に首位の座を明け渡すことに。

お茶の歴史が動いた瞬間を、くわしくリポートします!

お茶の産出額日本一は鹿児島県!

農林水産省が発表した統計データによると、2019年の鹿児島県のお茶産出額は、生葉163億円、荒茶89億円の、合計252億円となりました。

一方、静岡県では生葉147億円、荒茶104億円で、合計251億円。生葉の産出額に大きく差がつき、全体の産出額で見ると、わずかに鹿児島県に及びませんでした。

2019年のお茶生産

鹿児島県は、戦後から本格的にお茶の生産に本格的に着手し、以来、順調に成長を続けています。県内では、広くて平坦な土地を生かした、大規模な機械生産が特徴。安定した栽培経営を行っているため、後継者問題に悩むことも少ないと言われます。

「知覧茶」をはじめとするブランド戦略もうまく軌道に乗り、新しい品種の開発にも積極的。県を挙げてのお茶生産に対する姿勢が見事に反映された格好です。

一方の静岡県では、多くの茶畑が山間部に集中しており、大型機械が入りにくい地形になっています。収穫量の伸び悩みに加え、後継者不足が深刻化。さらに春先に冷え込んだ影響を受け、2019年は生葉の収穫量がぐっと落ち込みました。

生葉・荒茶とは?

生葉(なまは)とは、茶畑からお茶の葉を収穫し、そのまま出荷したものを言います。

荒茶(あらちゃ)は、収穫した生葉に蒸し・揉み・乾燥などの加工をしたもの。大きさや形、葉や茎などの部分に選別されます。

荒茶の状態で出荷された後は、それぞれのお茶屋さんで火入れ・ブレンドといった加工を経て、仕上げ茶として袋詰めされる、といった流れです。

鹿児島県が産出額トップになった背景とは?

今回、鹿児島県が静岡県を抜いてお茶産出額トップになった背景には、リーフ茶需要の低迷が関係しているといいます。

リーフ茶とは、急須で緑茶を入れるときの茶葉のこと。日本ではペットボトル緑茶が発売されて以来、リーフ茶の需要が低迷しています。最近では、緑茶といえばペットボトルがメインで、「お茶の入れ方がわからない」「家に急須がない」という方も多いようです。

ペットボトル緑茶はコンビニエンスストア、スーパーマーケット、ドラッグストアなど、どこへ行っても数種類が常備されており、私たちはいつでも好きなペットボトル緑茶を買うことができます。冬になればホット緑茶も流通するなど、ますます便利に。

それに反比例するように、家でゆっくりと時間を取って急須でお茶を入れる、ということがどんどん減っていきました。リーフ茶が主力の静岡茶に対し、当初からペットボトル緑茶にも注力していた鹿児島茶は、安定した成長を続けています。

時代の波に乗った鹿児島茶

2019年、鹿児島茶の生産量は生葉11万8400トン、荒茶2万3900トンとなりました。一方の静岡茶は生葉11万2600トン、荒茶2万5200トン。生葉の生産量にも大きな差が出ているのがわかります。

国内でのリーフ茶が低迷する中、鹿児島県では海外への輸出にも力を入れてきました。日本では低迷が続いていても、世界的に見ると緑茶の消費量は拡大傾向。注目を集める有機栽培茶や、手軽に入れられるティーバッグ緑茶など、新たな緑茶ジャンルに乗り出したり、健康志向・和食人気が高まる中、うまく時代の流れに乗ることに成功しています。

鹿児島茶は、国内でのペットボトル緑茶、海外でのリーフ茶市場を開拓し、順調に成長していることがわかりますね。

鹿児島茶のブランド戦略

荒茶の平均単価を見てみると、鹿児島茶が1048円に対し、静岡県は984円。こうした差はどこからうまれるのでしょうか。

みなさんが普段飲んでいるペットボトル緑茶。値段が上がった、と感じることはあまりないと思います。それなのに鹿児島茶の単価が上がっているのは、なにかヒミツがありそうですね。

鹿児島では「知覧茶(ちらんちゃ)」をはじめとするブランド茶や、新品種の開発・定着に力を注いでいます。

お米にコシヒカリ、あきたこまち…という品種があるように、お茶にも品種があります。しかし、お茶の品種はあまり知られていません。品種が違えば味も変わるもの。鹿児島茶はそこに着目し、たくさんの品種を栽培しているのです。

もともと温暖な気候なので、早熟な品種から、遅咲きの品種まで、さまざまな品種を育てるのに向いていた鹿児島県。品種を多くそろえることで「どれを飲んでも同じ」ではなく、色んな味わいの緑茶を生み出すことができます。ブレンドをすれば、さらにお茶の世界は無限大です。

お客様のニーズが多様化する中、「知覧茶の味・色・香りじゃないと」と言われるようなブランドを生み出したのも、大きなポイントとなりました。これから鹿児島県がどんなお茶を生み出していくのか、楽しみですね!

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