シングルオリジン品種茶。日本で最も作られているやぶきたとは?

お茶の種類

日本茶にはどんなイメージがありますか?透き通った黄緑色で、さっぱりとした味わい。春を思わせるみずみずしい香り。スッキリとキレのよい渋味。しつこくなく、控えめに感じるうま味、甘味。

こんなイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。実はこれ、「やぶきた」品種の特徴。私たちが「日本茶」と聞いてやぶきたをイメージするのはなぜなのか、やぶきたとは何なのか?詳しく解説します!

やぶきた とは?

最近ではずいぶんたくさんのお茶を見るようになりました。「知覧茶」「霧島茶」「鹿児島茶」「静岡茶」「狭山茶」…これらは言わばブランド名。銘柄といいます。様々な品種のお茶をブレンドしたものです。

品種とは、お米でいうとコシヒカリやササニシキなど、お米の中での種類を指しています。コシヒカリの種・苗からはコシヒカリが収獲でき、ササニシキの種・苗からコシヒカリは収獲できません。

品種がたくさん生まれるようになったのは、地域により環境が異なるから。寒い地域と暑い地域でまったく同じ品種を育てようとしてもうまくいきません。それぞれの地域に合うような品種改良を重ね、分かれていったのです。

やぶきたも、その一つ。静岡県で生まれたお茶の品種のひとつですが、現在では日本中で育てられる品種です。

やぶきたの誕生

やぶきたが誕生したのは明治時代。静岡県で農業経営をしていた杉山彦三郎は、お茶の研究に没頭していました。

彦三郎は1908(明治41)年、現在の駿河区にある津嶋神社前に所有していた竹やぶを開墾し、茶畑にします。中でも育てやすく、美味しい茶葉になる2本の木をえらび、それぞれ「やぶきた」「やぶみなみ」と名付けます。

みなさんお分かりのとおり、これがやぶきたの始まりです。以前は竹やぶだった土地で、北側に生えた木を「藪北」と名付けたのです。

彦三郎は研究を重ねるうち、やぶきたが大変優秀なお茶の木であることを発見。やぶきたをもとに100種を超える優良品種を生み出したと言われます。

やぶきたの普及

彦三郎の死後、やぶきたは静岡県立農事試験場で育成比較試験を受けます。このときに高い評価をつけられたことを機に、1945(昭和20)年には静岡県の奨励品種に指定されました。

1953(昭和28)年には農林水産省の登録品種となります。晴れて全国区にデビューしたやぶきたは、評判を背景に広まっていったのです。

やぶきたの長所

やぶきたは現在、日本の茶品種の75%を占める栽培量をほこります。なぜこんなにもやぶきたが普及したのでしょうか。それは、やぶきたの性質がカギになっています。

やぶきたは寒さ・乾燥に強く、成長が速い性質がありました。植え替えしても品質の変化がなく、安定的に栽培できるとして、全国の農家や流通業者の目に留まったのです。

くわえて味がよく、日本人の好みにピッタリとマッチしたことで、「日本茶と言えばやぶきた」のイメージが広まっていったのです。

やぶきた母樹

杉山彦三郎が「やぶきた」と名付けた最初の木は今、どうなったのでしょうか。現在は静岡県立美術館前ちかくの後編へ移植され、県天然記念物に指定されています。老木となった今でも、立派に葉をつけているんですよ。

地元のボランティアに管理され、観光名所として町おこしスポットになっているんだとか。やぶきたが発見された場所には杉山彦三郎の功績をたたえる記念碑が残されています。

やぶきた生まれの品種「さえみどり」

やぶきたが日本茶の75%を占めている現在では、平均的に美味しいお茶が飲める環境が整っていると言えます。しかし逆に言えば、やぶきたに大きく偏り、依存しているということでもあるのです。

全国的にやぶきたを栽培することで収穫期が偏り、その時期になると従事者の過重労働が頻発する結果に。かといって、少しでも摘み遅れてしまうと品質が低下し、売り物にならなくなってしまいます。

また、やぶきたばかりを重宝する傾向から、品質が均一化しどれも同じように見える、差別化できない、といった魅力低下の問題も。

そこで、やぶきた一辺倒の市場ではなく、新たなる品質の開発が急務となっているのです。

そんな中、今もっとも注目を集めているのが「さえみどり」。やぶきたと「あさつゆ」を掛け合わせた品種です。

さえみどりは、やぶきたよりも早生で、味・色・香の評価が高く、品種別品質評価試験では優良55品種中1位の総合成績を記録しました。人気ゆえに高値がついて、ジワジワと生産が広まっているんですよ。

ほかに、やぶきたから生まれた品種として注目されているものに「かなやみどり」「おくみどり」などがあります。やぶきたから生まれた子品種、孫品種たちが、日本茶の未来を変える日が近づいてきているようです。

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