日本茶といえば静岡県。そう思ってきた方も多いのではないでしょうか?ところが、その歴史が大きく動こうとしています。
静岡茶の減産傾向が続いている一方、生産量2位の鹿児島県は安定的な茶生産の環境が整った状態。毎年のように「今年こそ鹿児島茶が静岡茶に追いつくのでは」と言われています。
鹿児島茶が静岡茶に追いつくのはなぜでしょうか?鹿児島茶の生産量が多い理由を調べました。
鹿児島茶は日本一早い新茶の産地!
「走り新茶」という言葉を知っていますか?新茶の中でも一番最初に摘む、限られたものを言います。
昔から、走り新茶を飲むと寿命が延びると言われたり、縁起物として重宝されるなど、日本では親しまれてきました。ものによっては信じられないような高値がついて取引されることもあるんですよ。
新茶の中でもごくごく初期のものが、走り新茶。では、日本で一番早い走り新茶とは?
それが鹿児島茶なのです。鹿児島県は温暖な気候を生かし、新茶を超える「大走り新茶」を収獲できる地域。3月の半ばになると収獲が始まり、4月にもなれば新茶が出回ります。
そのころ、静岡県ではまだ、新茶の収獲を迎えません。5月上旬がピークですからね。鹿児島茶の走り新茶の勢いがお分かりいただけるのではないでしょうか。
新茶とは?
お茶っ葉は、チャノキという植物の葉を原料にしています。
チャノキは一見、冬になっても葉が落ちない常緑樹ですが、寒くなると成長を止め、冬眠します。寒い冬を乗り越えるため、無駄なエネルギーを使わないよう、ジッとたくわえておくのです。
そして春が訪れて温かくなると、チャノキは一斉に芽を出します。これこそが新茶。冬に貯め込んだ栄養をギュッと凝縮した新芽は、味も香りも濃厚で、フレッシュな力強さにあふれています。
お茶の中でも新茶は一等品。新茶の中でもさらに早い、走り新茶。新茶の時期にはぜひゲットしたいですね。
鹿児島茶は一番茶~秋冬番茶までの幅広い生産!
たとえば生産量5位の京都では、抹茶や玉露など、名の知れたブランド茶を多く生産しています。そしてこれらは、一番茶(新茶)しか収獲しません。一番茶が一番美味しいからであり、二番茶以降は味が落ちてしまうからです。
一方、鹿児島では二番茶、三・四番茶、秋冬番茶と、芽が出るうちは何度も収獲します。味は落ちてしまいますが、その分、生産量は多くなります。
鹿児島は温暖な気候なので、チャノキが寒くなって冬眠するギリギリまで芽を出します。それを捨てるなんてできない!という精神なんです。
番茶って?
一番茶の次に収獲されるものを二番茶と言います。三番茶、四番茶、秋冬番茶…と続きますが、一番茶以外のものを全部まとめて「番茶(ばんちゃ)」と呼ぶのです。
一番茶(新茶)に比べて番茶は味が落ちますが、カテキンを多くふくむなど、むしろ番茶の方が健康に良いという考え方もあります。コストパフォーマンスが良いのも番茶の魅力。番茶には番茶の良さがあるんですね。
鹿児島茶は栽培品種がたくさん!
鹿児島は温暖な気候だからこそ、できることがあります。それは、早生~晩生まで色んな品種を栽培できるということ。
早生品種はより早く、晩生品種も従来の常識より早く、出荷できます。ひとつの品種に偏ると、収獲時期が重なり、労働力の集中化や天災リスクが高まります。
しかし多様な品種を栽培することで、それらの問題を回避することに成功。しかも、様々な品種の個性を生かしたお茶を作ることができるようになったのです。
品種さえみどりって?
日本茶といえばやぶきた品種が7割を占める現在、もっとも注目を集めている新しい品種が「さえみどり」です。
味・香・色すべて良く、ここ数年で人気がグングン上昇。ともなって、価格も上昇しています。
さえみどりは寒さに弱いため、温暖な鹿児島県での栽培が大部分を占めているんですよ。
鹿児島は平坦な茶園が多い!
茶園といえば山間地帯が多いのですが、鹿児島県では平坦で広大な土地を利用しています。全国的に見ると平坦地茶園率は5割ほどですが、鹿児島県内に限っていうと99.7%という割合。
平坦な茶園が多いということは、収獲に大型機械を使うことができる、幹線道路が近いので輸送費用を安く抑えられる、上り下りがいらず労働者の負担が軽減される、などのメリットがあります。
乗用型摘採機の普及が進んでいる!
平坦で広大な茶園が多い鹿児島では、乗用型摘採機の普及が進んでいます。乗用型摘採機とは、トラクターがお米を収獲するように、人が乗って茶葉を収獲していく機械なんです!
機械化によって、作業効率アップと、労働者の負担減が達成されます。収獲に時間がかからず、収獲時を逃す心配も少なくなりました。
農業法人が多い!
鹿児島では農業法人化が進んでいます。静岡県が30%足らずなのに対し、鹿児島県は50%以上。これにより効率化を進めることができ、研究開発もしやすい環境になっているんですね。
農業法人が間に入ることで、生産者が市場ニーズを把握しやすい、適切な価格で取引できる、労働条件の改善に取り組みやすい、などのメリットも。
生産性が高い!
上に挙げたように、平坦で広大な茶園が多く、大型機械の導入が進み、農業法人化が進んでいる、秋冬番茶まで幅広く生産している、などの理由から、鹿児島茶は非常に生産性が高いのが特徴。
つまり、茶園の広さに対して、生産量が非常に高いんです。茶園の面積で比較すると、鹿児島県は静岡県の半分程度ですが、生産量はどちらも同等。鹿児島茶の生産性の高さがよくわかりますね。
鹿児島茶は若手後継者が多い!
上に述べたとおり、鹿児島茶の生産においては、生産者が働きやすい仕組みになっています。
そのため若い働き手にも人気があり、新規就農者の9割が40歳未満という状況が続いています。鹿児島茶の勢いを若さでリードしてくれているんですね!
クリーンなかごしま茶づくり運動!
「クリーンなかごしま茶づくり運動」とは、鹿児島茶づくりに関係する生産者、流通者、販売者などが一体となって取り組んでいる運動のひとつ。
安心・安全なお茶をお届けするため、異物混入や残留農薬などの問題に取り組んだ運動で、平成5(1993)年からスタートしたものです。
特に注目したいのは、鹿児島茶独自の生産履歴開示システム。生産者、使用された農薬の量や時期、収獲日、出荷日などを記録し、保存します。必要に応じていつでも開示できるなど、最先端のデジタル技術を使っているんですよ。
かごしま茶基礎GAPを制定!
クリーンなかごしま茶づくり運動をさらに推し進めるため、平成20年にかごしま茶基礎GAPが制定されました。
ISOなどの第三者認証を取得!
鹿児島茶といえば、第三者認証を取得していることでも知られます。第三者認証とは、「JIS」「ISO」などの国内外機関が定めている規格。
つまり、鹿児島茶をつくる工場などで第三者機関の審査を受け、見事に合格した、ということ!
K-GAP(かごしまの農林水産物認証制度)を取得すると、認証マークを表示して出荷できるなど、安心・安全をアピールできます。ほかにGGAP認証、ISO規格、有機JAS規格などの取得を推進しています。
鹿児島茶の関係機関が一致団結している!
鹿児島茶づくりでは、生産者、茶商、農協、行政、普及、試験研究などの組織が一体になっています。
そもそも、鹿児島県は古代に形成されたシラス台地の上に成り立っており、農業には不向き。シラス台地は水はけが良すぎるので、作物に十分な水が行き渡りませんでした。
しかし近代に入り機械化・工業化が進み、土地の開拓や改良、水治が行われると、農業王国としてめざましい発展を遂げるようになったのです。
鹿児島県でお茶生産が奨励されるのもそのころのこと。当時重要な輸出品目であったお茶に目を付け、特に戦後は急速に生産量を伸ばしました。これも、関係者一同が一致団結したたまもの。
現在も多方面から意見を出しやすい環境づくりに取り組み、常に新しいお茶づくりにはげんでいます。
茶市場が大きい!
全国で2位の生産量を誇る鹿児島県ですから、当然、茶市場も大きくなります。
さらに、新茶~秋冬番茶、早生~晩生品種と幅広く手掛けているため、市場は常に活気があふれているんです。
鹿児島茶は美味しい!!
そして鹿児島茶人気の最大の理由、それはやはり、美味しい!からではないでしょうか。
南の太陽を浴びて鮮やかな緑色をしており、爽やかな風を感じる香り。うまみが豊富で、奥深く濃厚な味わい。味・香・色、三拍子そろっています。
しかし「鹿児島茶」と一口に言っても、その年によって出来が違いますし、味にも微妙な違いが出てくるもの。品種が違えば驚くほどの違いがあるものです。
ぜひ色んな鹿児島茶を楽しんでくださいね!
鹿児島茶を探すなら嘉左衛門茶舗!
鹿児島茶を取り扱う嘉左衛門茶舗(かざえもんちゃほ)では、熟練の目利きが鹿児島茶を選りすぐっています。
こだわっているのは、鹿児島茶らしく、シンプルで甘味のある味わい。土作りの様子から生産者の方々に寄り添い、茶葉になるまでをじっと見守ってきました。
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