かぶせ茶はうま味・甘味が強く、美味しいのに、リーズナブルなものが多いですよね。かぶせ茶とは文字通り、覆いをかぶせて日光をさえぎったもの。茶葉を育てている途中で黒い布をかぶせ、日光をさえぎります。
日光をさえぎることで、うま味・甘味が強くなるなど、茶葉の中では不思議な変化が起こります。かぶせ茶についてくわしくのぞいてみましょう!
かぶせ茶とは
かぶせ茶とは、お茶の木に2週間ほど覆いをかけ、茶葉の甘味・うま味、コクを上手に引き出したお茶のことです。このときに使う多いは寒冷紗(かんれいしゃ)やよしず(立てすだれ)、わらなどが定番で、こうした栽培方法を被覆栽培と言います。
似たようなお茶に玉露がありますが、玉露は3週間~1か月ほど日光をさえぎる期間があり、甘味・うま味が豊富です。抹茶も同様で、被覆栽培の期間は玉露よりも5日ほど長いと言われます。
日本でもっとも一般的な煎茶は、覆いをかけず、日光をさんさんと浴びたものです。バランスのよい渋味、キレを楽しむお茶です。
つまりかぶせ茶は、煎茶と玉露の中間と言えますね。かぶせ茶が生まれたのは、1835年ころ。江戸の茶商が抹茶の栽培方法を煎茶にも試してみたのがきっかけと言われています。
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日光をさえぎると?
植物は日光を浴びて光合成をします。これは、おもに葉に存在する葉緑体(クロロフィル)で行われるもの。植物が光合成をすると、二酸化炭素と水から酸素とデンプンを作り出します。ここまでは小学校の理科の授業ですね。
日光をさえぎると、植物は光合成ができなくなります。しかし光合成をして酸素とデンプンを作り出さないと、植物は生きていくために必要なエネルギーが足りなくなって、死んでしまいます。
そのため日光をさえぎられると、少ない日光を効率よく吸収しようとして、よりたくさんの葉緑体を作ろうとします。そして、チャノキの葉緑体には甘味・うま味成分のテアニンがふくまれているのです。
つまり覆いをかけて日光をさえぎるかぶせ茶・玉露は、あえて負担をかけることで甘味・うま味を引き出す製法をとっています。
うま味成分テアニン、渋味成分カテキン
前述したうま味成分のテアニンは、日光を浴びるとカテキンを生成します。カテキンと言えば健康に良い成分として知られていますが、いっぽうで苦味・渋味成分でもあります。煎茶の渋味・苦味は、ほとんどがカテキンによるものなのです。
さて、被覆栽培を行ったかぶせ茶は、葉緑素(クロロフィル)をたくさん生み出します。そのためうま味成分がタップリになりますが、同時に、葉緑素は緑色成分でもありますので、緑色が濃く、鮮やかになる、というメリットも。
被覆期間を短くすると、カテキンが生成されて渋めのお茶に、被覆期間が長くなると、テアニンが多く濃厚なうま味のお茶になります。
このほか、かぶせ茶にはビタミンC、ビタミンE、ビタミンAなどのビタミン類が豊富にふくまれており、美肌・紫外線ダメージ修復・疲労回復・シミ・くすみなどの症状にパワーを発揮します。
煎茶、玉露とは?
日本茶、緑茶、煎茶、玉露、そしてかぶせ茶。お茶にもたくさんの種類がありますね。使いなれない漢字は読みにくいですし、なにがなにやら分からない方も多いのでは?
そもそも「お茶」とはなんでしょうか。
お茶とは、チャノキという木の葉を原料にしたものです。チャノキはツバキ科の常緑樹で、冬でも葉が枯れ落ちません。しかし美味しいお茶となるのは、春に芽を出した新しい部分。これを新茶と呼びます。
日本でよく作られているのは緑茶です。茶の葉を収獲後、すぐに蒸して加熱することで、茶葉が発酵せずに緑色の状態が残り、多くの栄養成分が残存します。そのため世界中から注目を集めているんですよ。
つまり緑茶とは、茶葉を発酵させずに作ったお茶。不発酵茶のことを言います。ほかにチャノキの葉からは、半発酵茶(ウーロン茶など)、発酵茶(紅茶など)も作られます。
日本茶=緑茶?
「日本茶」というと、多くの人が「緑茶」をイメージします。チャノキの葉からはウーロン茶や紅茶も作ることができますが、緑茶のイメージが強いのではないでしょうか。
それはやはり、日本で作られるお茶のほとんどが緑茶だからです。そして、日本では緑茶が好まれるからです。
緑茶は、日本に住む人々に、日本の食べ物に、生活や風土に合っているということなのでしょう。
実は、日本の国土の狭さも緑茶の発展に一役買っているのだとか。緑茶は収穫後すぐに加工しなければならないなど、鮮度が重要です。狭いがゆえに、いつでも新鮮な緑茶を飲めるというわけですね。
(現在では流通・輸送が発達しており、海外でも新鮮な日本茶を楽しめます!)
茶とは?
茶とは、チャノキの葉(や茎など)を原料にしており、お湯や水で成分を抽出した飲み物です。
茶の中でも、日本で作られているものが日本茶。
日本茶の中でも、収穫後すぐに加熱し、発酵を止めたものが緑茶。
緑茶の中でも、日光をたくさん浴びたものが煎茶。日光を2週間ほどさえぎるのがかぶせ茶、1か月ほどさえぎるのが玉露、ということになります。
茶 > 日本茶 > 緑茶 > 煎茶・かぶせ茶・玉露
こんなイメージですね。
茶じゃなくてもお茶?
チャノキを原料としていなくても「茶」と呼ばれるものがあります。麦茶、黒豆茶、ごぼう茶…これらはチャノキ以外を原料にしているため「茶外茶(ちゃがいちゃ)」にあたります。
緑茶や紅茶などと同じように、お湯・水を注いで抽出して飲むため、〇〇茶と呼ばれます。しかし茶外茶は厳密にいうと「茶」ではないのです。
かぶせ茶の生産
日本ではお茶といえば鹿児島、静岡が知られており、抹茶と言えば京都のイメージがあるかと思います。それではかぶせ茶はどうなのでしょうか?
かぶせ茶は日本茶全体の4.2%を閉めています。意外に少ないですが、関東から九州まで、多くの地で生産されています。その中でも最も多くかぶせ茶を生産しているのは三重県です。三重県は静岡、鹿児島に次いでお茶生産量が第3位。全かぶせ茶の6割を生産しています。
三重県は四日市、鈴鹿、松阪など各地でお茶を生産しており、水沢(すいざわ)茶は代表的なかぶせ茶です。西日本での流通が多く、関東地方にはあまり入って来ません。
かぶせ茶の製造方法
収穫されたかぶせ茶は、その瞬間から酸化が始まります。酸化したお茶はウーロン茶や紅茶になってしまいますので、酸化を止めるために蒸す「殺青(さっせい)」をします。ムラができないようにかくはんしながら蒸していると、青臭い香りがさわやかな香りに変化します。
蒸した茶葉には水滴がついていたり、葉と葉が重なってくっついているものがあります。これをバラバラにし、余分な水滴を落とす「露切り」を行います。
続いては「揉み」です。茶葉を揉むと丸く団子状になってくるので、それをほぐし、さらに揉み…と繰り返します。最終的には針状になっていきます。最後にこれを乾燥させて、かぶせ茶の完成です。
かぶせ茶の美味しい入れ方
煎茶は熱め、玉露はぬるめのお湯を使うのがオススメですが、かぶせ茶は、どちらの特徴も併せ持ったお茶。
熱めのお湯(80度くらい)を使うとスッキリとキレのあるさわやかさを、ぬるめのお湯(70度くらい)を使うとうま味・甘味・コクのある濃厚な味わいを楽しむことができますよ!
まずは組み立ての水道水をしっかりと沸騰させるところからスタート。ボコボコと泡が出るくらい沸騰したら、急須や湯のみを温めます。
急須に入れる茶葉の量はきちんとはかりましょう。一人分が3~4g程度です。
急須に茶葉を入れたら、やさしくお湯を注ぎ、フタをして1分蒸らします。茶葉によって美味しい温度や蒸らし時間は異なるので、パッケージをよく確認しましょう!
かぶせ茶の特徴
かぶせ茶は煎茶と異なり、覆いをかけて日光をさえぎりますが、玉露ほど長期間ではありません。つまり煎茶と玉露の中間。どちらの特徴も併せ持っています。茶葉の緑色が濃く鮮やかで、渋味が少ないのが特徴です。
しかしかぶせ茶の中には、2週間ほどの遮光期間でも、玉露のような強い甘味を持つものも!反対に、どんなに長期間覆いをしても甘味・うま味が出ない茶葉もあるんですよ。
それだけでなく、その年の気候や、育て方、環境によって、茶葉の味は変わります。加工方法によっても大きく個性が出てきます。近年は特に、「日本茶」「かぶせ茶」といったイメージにとらわれず、色んなお茶が出てきました。
それぞれのお茶にピッタリの栽培・加工方法を経て、全国、世界中へ。緑茶の世界って奥が深いですね。