手軽にお茶を飲みたいとき、忙しくて時間がないとき、粉末緑茶は水やお湯と混ぜるだけですぐ飲めるので、便利でうれしいですよね。
ところで、粉末緑茶とよく似たものに抹茶があります。いずれもお茶を粉状にしたものですが、なにが違うのでしょうか?見た目はソックリですし、同じものだと思っている人も多いのでは?しかし抹茶独特の風味は、粉末緑茶とは異なるものです。
気になる抹茶と粉末緑茶の違いをまとめました。
抹茶とは、碾茶を粉末にしたもの
そもそも、粉末緑茶が「煎茶」を粉末状にしているのに対し、抹茶は「碾茶(てんちゃ)」を石臼あるいは微粉砕機で挽き、粉末にしています。碾茶も煎茶も、原料となるのは同じ「チャノキ」ですが、製法が異なります。
チャノキを育てるとき、お日さまをいっぱいに浴びて育つのが煎茶です。いっぽうの碾茶は、20日以上日光を遮断する期間をもうけます。日光をさえぎることで渋味成分のカテキンが生成されず、代わりにうま味成分のテアニンを多く含むように。
なお、この碾茶を日本で最も多く生産しているのは京都。抹茶といえばやっぱり京都が思い浮かびますよね。とくに宇治での抹茶生産がさかんで、「宇治抹茶」ブランドとして知られます。この碾茶を、石臼あるいは微粉砕機で挽いたものを抹茶と言います。
抹茶の材料「碾茶」の作り方
碾茶が煎茶と大きく製法が違うのは、「かぶせ製法がある」「揉む工程がない」ということです。かぶせ製法とは、お茶を収獲する前の一定期間、日光をさえぎって栽培する製法のこと。日光をさえぎるために、遮光カーテンのような黒い布や、よしず(ワラで編んだ敷物)を使います。
碾茶の場合、茶園全体に屋根をつくるように覆うことが多いですが、茶園や地域によっては、お茶の木の一列一列に直接布をかぶせて覆うことも。日光をさえぎる期間は最低20日間といわれ、これより短いものは「かぶせ茶」「おおい茶」などと呼ばれます。
かぶせ製法を行うことで、茶葉は「かぶせ香」といわれる香ばしい香りを持ちます。うまみ成分のテアニンをタップリと含んでおり、とろみのあるお茶になります。テアニンの持つリラックス効果・リフレッシュ効果で、集中力を高めたり、睡眠の質を高める効果もあるのだとか。美味しくて体にもいいお茶なんですね!
また、一般的な煎茶では加工中に「揉む」工程をふくみます。茶葉を揉むことで水分を抜きながら形をそろえていきますが、碾茶には揉む工程がありません。茶葉と茶葉が重なったりくっついたりしないよう、風を送りながら乾燥させます。そのため、青のりのような形状に。
乾燥させた碾茶から茎の部分を取り除くと碾茶の完成です。さらに碾茶を粉状に細かくしたものが抹茶。一般的な煎茶と比べると、ずいぶんと手間をかけて作っていることがわかりますね。粉末緑茶と比べると、抹茶の方が値段が高いことが多いでしょう。
抹茶は「点てる」?
普通、お茶は「入れる(いれる、淹れる)」ものですよね。一方、抹茶は「点てる(たてる)」と言います。煎茶が急須に茶葉を入れてお湯を注ぐのに対し、抹茶は独特の作法があり、抹茶の道具を使います。
煎茶を入れるのは湯のみが多いと思いますが、抹茶を点てるのは大き目の茶碗(ちゃわん)。そこへ抹茶と少量のお湯を入れて、茶筅(ちゃせん)で泡立てながらよく混ぜます。抹茶を点てるというと、難しいと思われる方が多いんですが実は簡単なんです。初心者のかたでもコツさえつかめば美味しく点てることができますよ!
抹茶の点て方にはいくつかの流派があり、飲む方にも作法があるもの。最近では、抹茶の産地・宇治を中心に茶道を体験する外国人観光客も多いようです。抹茶に興味が出てきたら、それぞれの流派を学んでみるのも面白いですよ!
食べる抹茶
その他にも、私たちに身近な抹茶がありますよね。それは「抹茶アイスクリーム」と始めとするスイーツの数々。プリン、ケーキ、クッキー、おもち、チョコレート、ビスケットなど、さまざまなお菓子に抹茶が使われています。
最近では海外でも抹茶が人気で、喫茶店やオーガニック食品店で取り扱われるほどになりました。健康食品として世界で抹茶が食べられているなんて、不思議な感じがしますね!
\あわせて読みたい記事はこちら/
抹茶の歴史
抹茶の由来は、日本ではなく中国です。古代中国の神話に登場する「神農」が発見した飲み物と言われています。神農がお湯を沸かしていると、風に乗って葉っぱがヒラヒラと鍋へ入ってしまいます。みるみる内にお湯の色が変わり、不思議な香りを放ち始めたため、興味が沸いて飲んでみたところ、美味しかった、という伝説が残っています。
紀元前2737年のことと言われますが、果たして本当かどうか…?いずれにせよ、そのお茶は形を変え、西暦1,000年ころには粉末状に加工されるようになっていました。これは運搬や保存のために考えられた方法です。
さて、日本では西暦805年、最澄・空海が中国へ渡って仏教の修行をしています。日本へお茶の種を持ち帰ったのが、日本でのお茶初上陸と言われています。仏僧の永忠が時の嵯峨天皇へ緑茶をふるまったという記録が残っているんですよ。
嵯峨天皇はこのときのお茶を気に入って、京都を中心とした地域にお茶農園を作らせたそうです。
抹茶の誕生
1187年、仏僧の栄西は禅宗を極めるため中国へ渡ります。このとき中国では「緊圧茶」が主力となっていました。これは茶葉を圧縮して固めたもので、割って砕いて、すりつぶして粉々にして使います。これこそが抹茶の原点です。
中国ではお茶が集中力を持続させると信じられていました。栄西は禅宗の修行に役立つと考え、お茶を持ち帰ることにします。栄西はお茶を広めるために「喫茶養生記」を執筆。たくさんの人々へお茶を紹介したのです。
その後お茶の魅力がじょじょに広まり、京都の栂尾や宇治でお茶の栽培が盛んになります。室町時代に入ると、足利義満の命令を受けてさらにお茶栽培が奨励されることとなりました。以降は「闘茶」を中心にお茶文化が活気づきます。闘茶とは、いわば聞き茶。飲んで産地を当てるゲームです。
茶の湯の確立
15世紀には「茶の湯」が確立します。抹茶の作り方、飲み方は貴族ばかりか武士の間で急速に広まり、千利休は茶聖とあがめられます。
利休はただ純粋にお茶を楽しむために、平等に、平静に、お茶をたしなむ心をよしとしました。そのために余計な装飾品をできるかぎり省き、限られた材料で最大限に客をもてなす「わび茶」を考えます。これは現代の表千家・裏千家・武者小路千家へ受け継がれています。
お茶が緑色になった!
私たちにとってお茶と言えば緑茶が当たり前ですが、その当たり前が生まれたのは、江戸時代のこと。それまでお茶はずっと茶色だったのです。
江戸中期に永谷宗円が緑色のお茶をつくる「宇治製法」を生み出します。鮮やかで深い緑色のお茶は、江戸の人たちを魅了します。宇治製法で作られるお茶は香りも豊かで、ますます人気が出ました。
現在の私たちと抹茶
私たちは抹茶をお茶ばかりでなく、抹茶アイスクリームや抹茶ラテへと進化させました。ペットボトルや牛乳パックに入った抹茶飲料もあり、気軽に生活の一部として抹茶を楽しんでいます。
粉末緑茶とは、煎茶を粉末にしたもの
一般に「緑茶」と言うときは「煎茶」を指します。茶葉を日光で覆うことがないため、カテキンを多く含みます。適度な渋味とうま味をあわせ持っており、さわやかな風味は誰にも愛される味わいですね。碾茶とは違ってかぶせ栽培をせず、収穫後は揉み工程を行います。
完成した煎茶を機械で粉末状にしたものが「粉末緑茶」です。粉末緑茶の使い方はいたってシンプル。お水やお湯と混ぜるだけです♪手軽に使えるので、忙しいときに重宝しますね。実はこちらの粉末緑茶もお菓子作りに最適なんですよ。
通常の緑茶は、茶葉にお湯を注ぎ、成分が抽出されるのを待ちます。粉末緑茶の場合は、丸ごと粉砕した茶葉を一緒に飲むことに。そのため、ビタミンや食物繊維などの効能を得られるのもいところです。お茶殻が出ないので、後片付けがラクといったポイントも!
ただし粉末状になっている分、風味や効果・効能の劣化が早く、香りが飛びやすいという短所もあります。保管する際はしっかりと密封して冷暗所に置いておくのがベストです。
(※ちなみに「粉茶」とは、煎茶を製造する段階で出るとても小さな茶葉のこと。粉末緑茶よりも粒子が大きく、水で溶けません。)
まとめ
抹茶と粉末緑茶、見た目はよく似ていますが、実はこんなにも違うところがあるんですね。違いが分かると、お茶の世界はさらに楽しくなったハズ。それぞれの美味しさをいかして、毎日の暮らしにうまく取り入れてくださいね♪