お茶の生産で有名な「日本三大産地」は静岡、鹿児島、三重ですが、それとは別に
「日本三大銘茶」というものがあるのをご存知でしょうか?
「色は静岡、香りは宇治よ、味は狭山でとどめさす」
これは狭山茶摘み歌の有名な一節で、日本三大銘茶をうたっています。
ちなみに最近では生産量が少ない狭山茶に代わり生産量の多い鹿児島茶が加わることもありますが、今回はこの歌にもある「静岡茶」「宇治茶」「狭山茶」を紹介していきます!
日本三大産地とは?
お茶の生産で有名な地、お茶の生産量が多い地を3つまとめて「日本三大産地」と言います。静岡、鹿児島、三重の順に、お茶の生産量が多いです。
お茶の産地と言えば静岡、というイメージがあるかもしれませんが、2021年度の生産量は鹿児島県が静岡県を抜いて1位になる!?という予想が出ており、来年からは順番が入れ替わるかもしれません。では、それぞれの県のお茶について、詳しく見ていきましょう!
三大産地①静岡県
静岡は古くからお茶を生産してきた地域で、歴史をさかのぼると鎌倉時代に行き当たります。しかし静岡のお茶生産が活発になったのは明治初期から。封建制度の解体によって、職を失った武士たちが、現在で言う牧之原台地を開拓します。鎖国が終わった日本において、海外への輸出品として重要な産業となりました。
その後「やぶきた」という品種が発見されたことをきっかけに、日本国内でも人気をきわめます。お茶を加工する「蒸し」「揉み」「乾燥」「火入れ」などの各過程では、技術をみがく職人が生まれました。
こうして現在に至るまで、三大産地のトップを守り続けてきた静岡県。今でもたくさんのブランド茶を有し、日本中の人たちに愛されています。
三大産地②鹿児島県
鹿児島県も古くからお茶を生産してきた地域ですが、江戸時代に薩摩藩に奨励されてから本格化。平成に入ってからの勢いはすさまじく、温暖な気候を利用して年に5回も収穫したり、平坦な土地を利用して機械による大量生産を行っています。日本でもっとも早い新茶「走り新茶」でも有名です。
そのかいあって、2021年には静岡県を抜いて鹿児島県が生産量1位になるという見通しも出ているんですよ。活発なお茶競争が繰り広げられている様子は、まさに三大産地!
日当たりが良い地域では被覆栽培による「かぶせ茶」、県北部や高地では香り高いお茶が産出し、これらを自在にブレンドしたり、また、単一で販売することで、色んなお茶を楽しむことができます。質は高いいっぽう、機械化により単価を下げているので、コストパフォーマンスが良いのも人気の一因です。
鹿児島県の枕崎市で誕生した「さえみどり」は、寒さに弱いものの味・色が素晴らしく良いため、今もっとも注目されている品種。人気に伴って価格も急上昇しています。
三大産地③三重県
三重県は、「かぶせ茶(おおい茶)」の生産量が日本でもっとも多い地域です。かぶせ茶とは、お茶を収穫する数日前から、茶葉に黒い布などをかぶせる手法のこと。日光をさえぎることで、甘味・うま味が強く、渋味が少ないお茶ができるのです。
三重県内で生産されたお茶は「伊勢茶」と呼ばれ、とくにアイスクリームなどの加工用としての生産量も日本一です。
日本三大銘茶とは?
銘茶とは特別に名のある上質な茶のことを言います。つまり、日本三大銘茶とは、数あるお茶の中で最もすぐれた三つのお茶ということです。そう聞くと、ますます興味がわいてきませんか?
それでは 静岡茶、宇治茶、狭山茶を一つずつ詳しく解説していきます。
静岡茶
静岡県は、お茶の生産面積・生産量ともに日本で一番という、言わずと知れたお茶の産地ですね。
一般的に静岡県内で生産されているお茶を「静岡茶」と呼んでいますが、その県内に20を超える良質なお茶の産地がある、というのが特筆すべき点です。
県内それぞれの地域で栽培されたお茶はブランドとして確立されており、静岡茶とひとくくりに言っても、その中にはたくさんのブランド茶があるのです。
静岡県内における主なブランド茶を下記に紹介します。
川根茶(かわねちゃ)
有機栽培が盛んで、手摘みで収穫されることが多く、丁寧に手摘みされたそのお茶はしっかりとした旨味と甘みで、優しい味わいも特徴的。
天竜茶(てんりゅうちゃ)
天竜川からほど近い山間部で栽培されており、こちらもまだ手摘みが主流。主に浅蒸しの普通煎茶で香りも高く上品でスッキリとした味わいが特徴。
本山茶(ほんやまちゃ)
安倍川、わらしな川の上流で生産され、静岡最古のお茶とも呼ばれている。
ミネラル分が豊富なそのお茶は、「山の香り」と呼ばれる独特の余韻を持つ。
掛川茶(かけがわちゃ)
掛川市内の東部を中心に「茶草場農法–ちゃぐさばのうほう」という独自の伝統農法で栽培され、深蒸し煎茶で渋みが抑えられたマイルドな味わい。
牧之原茶(まきのはらちゃ)
その昔、武士の命を解かれ農民になった人々が茶栽培用に土地を開墾したことが始まり。水はけの良い赤土の酸性の土壌で栽培され、深蒸し煎茶が主流。鮮やかな緑色に芳醇な香りと苦味等が少ないのが特徴。
静岡茶が日本三大銘茶に選ばれる所以!?
ちなみに日本の75%を占める「やぶきた」が発見されたのも静岡県
上に挙げただけでも5つの静岡県内のブランド茶があります。
この他にも富士・沼津・清水・愛鷹山などなど静岡茶として有名な上に、その中でさらにそれぞれの地域のお茶のブランドが確立されているとなると、それもまた三大銘茶の一つとして挙げられる所以なのかもしれません。
その土地土地で味の違いはもちろん、農法も独自のものがあったり、生産量や生産面積まで考えると、やはり銘茶の一つとして挙がることに文句なしなのではないでしょうか?
宇治茶
京都といえば、抹茶やお茶のイメージがありますよね。
抹茶を使った名物やスイーツもたくさんあります。
実際、宇治茶が生まれた京都は玉露・碾茶・煎茶の産地としても有名です。
そして日本のお茶の始まりの場所は、鎌倉時代に栄西から明恵によって宇治にチャの木が植えられたことから、宇治だと言われています。
宇治川の川の霧が立ち、涼しく霜の少ない宇治は、茶の栽培に最適な風土を備えていたのです。
さらに1738年に永谷宗円によって考案された、現在の煎茶の生産法のもとでもある「手揉み製法」は宇治市の無形文化財として保存されています。
宇治茶といえば抹茶
抹茶でも有名な宇治。なかでも「ごこう」という代表的な品種は、玉露や抹茶の原料となる碾茶として栽培されることが多く、揮発性のある特徴的な香りがあります。
宇治茶と呼ばれるお茶。実は京都府だけのものではないんです。
実は、宇治茶と呼ばれるお茶は厳密に言うと京都府だけのものではないのです。
京都府・奈良県・滋賀県・三重県の4府県産のお茶を京都府内の業者が京都府内で、さらに京都南部の宇治地域に由来する製法で仕上げ加工したものを「宇治茶」と呼びます。さらにその中で京都府産のものを優先して「宇治茶」と定めています。
ちょっと複雑に思われるかもしれませんが、この定義には訳があります。
「宇治茶」が有名になるにあたり、京都以外の県も歴史や文化・地理・気象など総合的に貢献してきたことを鑑み「宇治茶」をここまで共に育て上げてきた他3県産のお茶も、ある基準をクリアしていれば「宇治茶」として認められ、その名を使うことが出来るようになったのです。
宇治茶の特徴は?
宇治茶の産地である京都や宇治田原周辺は昼夜の寒暖差が大きいため、そこで生産されるお茶はとても香りが良く上品です。また渋みが最初に、後半にかけてはコクや甘さを味わうことが出来るので、変化を楽しめるお茶と言えるでしょう。
狭山茶
冒頭の茶摘み歌の一節、その最後に歌われているのが狭山茶。
この茶摘み歌自体も狭山の歌ですし、「味は狭山でとどめさす」と言われるくらいに美味しいお茶が作られているのです。
狭山茶の産地は埼玉県入間市
もともと江戸中期に武蔵国の狭山兵陵一帯でお茶の生産地が開拓されましたが、現在の狭山茶の主産地はお隣の入間市になっています。
狭山はどんなところ?
狭山は、お茶産地の中では冷涼な気候です。三大産地と比べても、かなり北側に位置していることがわかります。そのため、冬の間はお茶の木がじっくりと休むことができ、コクのあるお茶に仕上がるのだとか。茶葉は厚みがあって、香りや味わいが濃厚になります。
比較的平坦ですが台地なので、寒暖差が激しいことも、狭山茶を美味しくするヒミツのひとつ。美味しいお茶が作られる条件が整っているんですね!
生産量の少ない狭山茶
狭山茶の茶葉生産量はかなり量が少ないです。というのも商業用として茶を育てるにしては地理的に北に位置している為、生葉の収穫は年二回、二番茶までとされているからです。
その為、他の地域に比べると生産量は自ずと少なくなるという訳です。
独自の製法!狭山火入れ
ではなぜ三大銘茶と呼ばれるまでになったのか?
そこには、製法が少し関係あるのではないかと思います。
蒸し焙炉に和紙を敷き、茶葉を揉み乾かすという手揉み茶の製法。
それに加えさらに「狭山火入れ」と呼ばれる伝統の火入れによって仕上げられた茶は、色・味・香りの全てに厚みを加え、少ない茶葉でもよく味が出るとされています。
狭山茶の味わいは、この火入れにより甘くて濃厚なものに仕上がるのです。
日本三大銘茶はわかりましたでしょうか?
以上、三つの銘茶を紹介いたしました。
生産量や面積はもちろん、それとは別にその土地の伝統の製法や歴史からも銘茶として昇華し、世に知れ渡っていった日本三大銘茶。
お家での時間に飲み比べて それぞれの違いを楽しんでみたり、特別な贈り物として 銘茶を取り寄せてみるのも良いのではないでしょうか?