夏も近づく八十八夜~♪みなさん一度は口ずさんだことがあるのではないでしょうか。この曲は茶摘みの光景を歌ったもので、耳にすると春の茶畑の瑞々しい緑の風景が目に浮かびますよね。
この「八十八夜」というのは立春から数えて88日目にあたる日、5月1日~3日頃。ただ、実際には産地の気候などによって新芽の育成状態も異なり、「八十八夜」よりも早い時期から茶摘みが始まります。
南北に長い日本では4月上旬の鹿児島を皮切りに北上していきます。南から北上する梅雨前線、桜前線のように、「新茶前線」なんて言葉もあるのです!それでは各地の新茶の時期とその特徴について順にご紹介します!
そもそも「新茶」って?
最初にとれたお茶のこと?
新茶とはその年の最初に摘み取られた「一番茶」のことで、最も品質がいいものです。その後2回目に摘み取ったのが「二番茶」で、以降「三番茶」「四番茶」となり、秋ごろまで摘採が続き、徐々に品質が下がっていきます。
ただ、品質が下がるからといっておいしくないわけではなく、さっぱりとした味わいで、熱湯で入れてもおいしいんです。三番茶以降はペットボトル茶の原料やほうじ茶など安価なお茶となります。
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「新茶はおいしい」って本当?
一番茶は冬の間にゆっくりと時間をかけて春に新芽を出します。そうするとうま味成分のアミノ酸類などの栄養分が葉に蓄えられます。
二番茶以降は夏の暖かい気候で短期間のうちに一気に成長するためうま味が少なく、反対にタンニンなどの渋み・苦味成分が多く、葉も硬くなってしまいます。一般的に「新茶がおいしい」といわれているのは、このような成分の違いが理由です。
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いつまで新茶なの?
お茶屋さんの多くは一番茶をお茶専用の低温の冷蔵庫で保管し、それを都度焙煎して一年中販売しています。そうするとそのお茶は新茶と言うことができます。
ですが、ほとんどのお茶屋さんでは長くても6月で新茶の販売を終了します。それは季節ものとして、フレッシュさを味わって欲しいから
。野菜でも果物でも旬のものってみずみずしくておいしいですよね。お茶の旬=新茶です。おいしいこの時期にぜひ味わいたいものです。
全国で最も早い鹿児島
走り新茶?いや、大走り新茶!
もっとも早く茶摘みが始まるのが鹿児島。全国に先駆けていることから「走り新茶」といわれています。
さらに県内各地でお茶を栽培している鹿児島の中でも、最も南に位置する種子島ではなんと3月下旬から!走り新茶よりも早く摘採するため「大走り新茶」と呼ぶそうです!
鹿児島茶がいち早く新茶の季節の到来を告げてくれるんですね。そして温暖な気候を生かして新茶から四番茶まで、秋冬番茶まで豊富に摘み取ることができるのです。
甘味が特徴の鹿児島茶
日照量の多い産地のお茶は渋み成分の含有量が高くなりがちですが、甘味を保つために摘採の前に覆いをかぶせる「かぶせ茶」や、蒸し時間の長い「深蒸し茶」が多く作られています。
また、摘み取り時期の早い「さえみどり」「ゆたかみどり」「あさつゆ」といった品種が普及しています。
長期間摘採できる静岡
県内多数の産地で長期間摘採可能
静岡の新茶は4月中旬から。東西に長く標高差が大きいため摘採時期も長く5月中旬まで新茶が採れます。「静岡茶」と一言でまとめられることが多いですが、静岡県内でも多くの産地があります。
特に山間地の静岡や川根は平坦地と比べると昼夜の寒暖差が大きいのが特徴。その分ゆっくりと成長するのでうまみ成分が長く保たれるのだとか。
一方平地では昼夜の温度差も少なく日照時間も長いため、生育が早くより早い時期から新茶を摘み始めます。平地のお茶はすべての味成分が適度な濃さで調和し山間地よりも味が強くなる傾向があります。
やぶきたを中心に多様な品種を
おそらくもっとも有名な品種「やぶきた」が作付面積の約8割。ですが現在全国で栽培されている多くの品種が静岡で作られてきました。生産量一位の静岡は大量生産だけではなく単一品種のお茶まで幅広く栽培しているも特徴です。
また産地としてだけでなく仕上げと合組みの技術を持つ茶問屋が昔から多く集まっているため、他産地の茶が仕入れられる集積地ともなっています。「お茶といえば静岡」というイメージが強いのもこういったことが理由ですね。
ゆっくり育てる京都
時間と手間をかけて最高級のお茶を
玉露や抹茶で有名な宇治茶を含む京都は4月下旬が新茶の時期。周りを山に囲まれた盆地である宇治田原周辺は昼夜の寒暖差が大きくお茶を栽培するのに適しています。
先に書いた静岡の山間地同様、このような地域ではお茶はゆっくり成長するため、うまみの強い高品質のお茶が育ちます。高品質のお茶を手間をかけて他の産地と違って三番茶以降摘み取らないところもあります。
国内外で有名な京都のお茶
京都はお茶の産地としての歴史が長く、昔から特別視されていました。宇治茶はもっとも知名度の高いブランド茶ともいえます。静岡や鹿児島と比べると生産量は少ないものの、多くの茶種が作られ、品種も多様化しています。
特に被覆栽培の技術が発展し、「あさひ」や「さみどり」など被覆栽培に適した品種が作られてきました。
抹茶の原料となるてん茶や玉露が最高級のお茶として評価されています。海外にも日本茶文化が広がっているのもこの京都のおかげですね。
新茶の楽しみ方
温度を変えて違いを楽しむ
新茶ならではの甘味とうま味、フレッシュさを楽しむために70度くらいの少しぬる目のお湯で淹れて見てください。蒸らし時間は40~60秒ほど。
最後の一滴にうま味が詰まっていて、二煎目以降もおいしく飲むことができます。お湯の温度を少し上げて、二煎目、三煎目まで味わいの違いを楽しんでみてください!
意外と知らない?食べられるんです
三煎目まで飲んだら、食べてみましょう!お茶にはさまざまな栄養素が含まれていますが、飲むだけでは十分に摂取できないものもあります。それらを摂るために、新茶はぴったり。葉が柔らかいので無理なく食べられます。
おすすめは鰹節とポン酢をかけてお浸しにする方法。爽やかな苦味が感じらておいしいんです!ほかにも、お茶漬けにそのまま入れたり、ふりかけにしてご飯にかけたり、揚げ物の衣に混ぜたり、食べ方はいろいろ。ぜひ試してみてください。
おわりに
新緑の青々しく力強い味わいが特徴の新茶は、「飲むと一年間無病息災で過ごせる」「芽が出る=めでたい」と言われていることから縁起物としても親しまれています。
ご家庭用だけでなく、贈り物としてもぴったりの新茶をぜひ味わってみてください。各地の新茶を新茶前線に沿って飲み比べてみるのも面白いかもしれませんね♪